ウエスカ県の北部、フランスとの国境が近いピレネー山麓には、スペイン屈指の美しい村々が点在しています。
今回の記事では、ウエスカ市内から出発してピレネーの美しい村々を巡る、モデルルートを紹介します。ピレネーの雄大な景色を眺めながらのドライブは気持ち良いですよ。
数日かけてピレネー山麓観光を堪能したいという方は、ぜひ参考にしてください。
ルートマップ
ウエスカ県の県都を出発し、プレピレネー山脈からピレネー山脈へと北上しながら、ピレネーの村を巡るモデルルートです。
ピレネーの美しい村① アルケサル - イスラムの香り漂う「スペインで最も美しい村」
ウエスカ市内からA-22、A-1229、A-1232を経由して、車で約50分。プレピレネー山脈の麓のベーロ峡谷に囲まれた崖の上に、スペインで最も美しいと称されるアルケサルの村があります。
アルケサルの始まりは、イスラム統治時代の9世紀前半。キリスト教徒の侵攻からイスラム教徒の重要な拠点であったバルビタニアを守るために城砦が築かれました。村の起源となったこの城砦は、11世紀末にはロマネスク様式の教会となり、アルケサルの16~18世紀にかけて最盛期を迎えました。
アルケサルの市街地の西端に広々とした公共の駐車場が2カ所あり、どちらも無料で駐車できます。
アルケサルの見どころ
アルケサルの魅力は、イスラムとキリスト教文化が融合した町並みです。レンガや瓦を多用した3階建ての伝統家屋が迷路のような石畳の道沿いに立ち並び、イスラム起源の町の風情が感じられます。
村のシンボルとも言えるのが、村の起源となった砦跡に建設されたサンタ・マリア教会。11世紀に建設された教会で、ロマネスク様式の回廊、ゴシック様式の壁画、ルネサンス様式の祭壇彫刻など、見どころが豊富です。
アルケサルの周辺ではハイキングも楽しめます。ハイキングコースは、市庁舎のあるマジョール広場から始まり、エメラルドグリーン色をしたベーロ川を経て、川沿いの桟道を歩きながら峡谷の美しい景観を満喫できます。
アルケサルへの行き方
ウエスカ市内からA-22経由で西へ約51.8km、車で約50分
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ピレネーの美しい村② ロダ・デ・イサベナ - ロマネスクの至宝が眠るピレネーの村
アルケサルから、N-123とA-1605を経由して車で約1時間10分。スペイン最小の村として知られるロダ・デ・イサベナは、アラゴン州とカタルーニャ州の州境の近くのイサベナ渓谷を見下ろす小高い山の上にあります。
村の入り口に無料で駐車できる広い公共駐車場が設置されており、EV車用の充電器も完備されています。
現在は人口わずか40人程の小さな村ですが、10世紀にはリバゴルザ伯爵領の中心地として栄えました。
ロダ・デ・イサベナの見どころ
ロダ・デ・イサベナの村の中心は、11世紀初頭に建設された大聖堂です。リバゴルサ伯爵領の都であったことを彷彿とさせる規模で、地下礼拝堂、フレスコ画の残る霊廟、ロマネスク彫刻などが残っています。大聖堂に併設されたロマネスク様式の回廊に面した建物は、かつて修道士の食堂として使われていましたが、現在ではウエスカの郷土料理を楽しめるレストランとなっています。
ロダ・デ・イサベナから北へ約23kmのサンティアゴ巡礼路沿いには、大聖堂と同時代に建設されたオバラ修道院があり、敷地内にはロマネスク様式のサンタ・マリア教会と小さなサン・パウロ教会が建っています。ロダ・デ・イサベナの観光が終わったら、ぜひ立ち寄ってみてください。
ロダ・デ・イサベナへの行き方
アルケサルからN-123とA-1605経由で北東へ約81.6km、車で約1時間10分
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ピレネーの美しい村③ アインサ - ピレネー山麓の「スペインで最も美しい村」
ロダ・デ・イサベナからA-1605、A-139、およびN-260経由して、車で約1時間。ピレネー山脈から流れるシンカ川とアラ川が交わる、小高い丘の上にアインサの村が見えてきます。シンカ川を渡って村へ入ると、すぐ左手に公共駐車場があります。
アインサの始まりは8世紀。アインサを都とするソブラルベ伯爵領が誕生したことから始まりました。11世紀に入ると、ソブラルベ伯爵領は隣接するアラゴン伯爵領・リバゴルサ伯爵領と統合し、アラゴン王国が誕生。12世紀には、山岳地域の交易の拠点として繁栄しました。
アインサの見どころ
アインサの最大の見どころは中世の面影が色濃く残る町並みで、旧市街地全体が史跡および重要文化財に指定されています。サンタ・クルス通りとマヨール通りの2本のメインストリート沿いには、レストラン・土産屋・食料品店などが軒を連ね賑わっています。
サンタ・クルス通り沿いにあるサンタ・マリア教会は11世紀に建設されたロマネスク建築の教会で、質実剛健でシンプルな外見が印象的。現在でもアインサの人々の暮らしの中心となっています。
防衛の要所であったアインサの名残は、11世紀から16世紀にかけて増改築された城跡に見られます。城壁の上は展望台として開放されており、ペーニャ・モンタニェサやアラ川が見渡せます。
アインサへの行き方
ロダ・デ・イサベナからA-1605、A-139、およびN-260経由で約75.7km、車で約1時間
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ピレネーの美しい村④ トルラ - ピレネー山脈への登山口
アインサから、アラ川沿いのN-260とN-260aを経由して、車で約45分。ウエスカ県北部のブロート渓谷に位置する標高約1000mの村、トルラに到着します。
15世紀頃にフランス領土からの侵入者を防ぐために塔が建てられたことから始まったトルラは、人口300人程の山間の小さな村です。現在では、オルデサ・イ・モンテ・ペルディード国立公園への入り口として、アウトドアを楽しみたい登山客で賑わう人気の避暑地です。
村の入り口には広大な駐車場があり、国立公園行きのシャトルバスが発着しています。
トルラの見どころ
トルラの村のシンボルとなるのは、谷を見下ろす大きな岩の上に建てられたサルバドール教会です。旧市街地は古い石畳の道や石造りの街並みが残り、中世の面影を今に伝えます。
トルラを訪れる人の多くは、オルデサ国立公園を目指す登山客です。国立公園行きのシャトルバスが発着する駐車場内には、国立公園のビジターセンターがあります。ここでは、オルデサ国立公園の生き物や植物の展示があり、公園内のハイキングコースの地図などの入手も可能です。
トルラへの行き方
アインサからN-260とN-260a経由で南東へ約44.3km、車で約45分
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ピレネーの美しい村⑤ ハカ - サンティアゴ巡礼路の宿場町
トルラからN-260aを経由して、車で約1時。フランス国境近くにあるハカは、中世にはフランスからピレネー山脈を越えるサンティアゴ巡礼路の宿場町として栄えた町です。
ピレネー山脈周辺は人口減少に悩む町村が多いのですが、ハカは人口が増加している町で、現在では13,000人を超えています。また、夏の避暑地やウィンタースポーツのリゾート地として多くの観光客が訪れ、活気に溢れています。
ハカの町の中心にあるシウダデーラ要塞の北側に無料の公共駐車場があります。広々としていて無料で駐車できるので、ハカの観光はここからスタートしましょう。
ハカの見どころ
駐車場のすぐ南側にあるのが、国定史跡にも指定されているシウダデーラ要塞。16世紀から17世紀にかけて、フェリペ2世の命で建築された軍事要塞で、五角形の角に矢の形をした稜堡を持つ星形をしています。敷地内には軍事ミニチュア博物館もあり、要塞の歴史を学べます。
旧市街地の中心にあるハカ大聖堂は、スペイン最古の大聖堂のひとつ。11世紀に建設されたもので、この大聖堂の存在がハカをサンティアゴ巡礼路の宿場町として発展させました。大聖堂に併設された美術館では、スペインを代表するロマネスク様式の壁画コレクションが展示されています。
ハカへの行き方
トルラからN-260a経由で西へ約54.5km、車で約1時間
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ピレネーの美しい村⑥ アンソ - ピレネー山脈西部の美しい伝統建築の村
ハカから、A-21とA-176を経由して、車で約50分。ピレネー山脈西部のベラル川沿いにあるアンソに辿り着きます。アンソの市街地の東端に公共の駐車場があり、無料で車を停められます。
アンソ村に残る多くの歴史的建造物は16世紀頃に建てられたものです。ピレネーで最もよく保存されているという旧市街地の歴史的建築群は、アラゴン州政府の重要文化財にも指定されています。
アンソの見どころ
アンソの最大の見どころは、中世の面影をそのまま今に伝える旧市街地の歴史的建築群です。アンソの伝統的な家は、隣家との間にアルテアと呼ばれるわずか50cmほどの狭い廊下があるのが特徴で、その代表であるカサ・モレネは一般公開されています。
旧市街地の中心にあるサン・ペドロ教区教会は、周囲を圧倒する壮大な規模のゴシック様式の教会です。外観は武骨な石造りの教会ですが、教会内には金箔で覆われた荘厳なバロック様式の主祭壇画があります。教会内の博物館では、17世紀から18世紀のバロック様式やロココ様式の聖具なども展示しています。
アンソへの行き方
ハカからA-21とA-176経由で北西へ約54.8km、車で約50分
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ピレネー地域でのドライブについて
スペインは、日本とは逆の左ハンドル&右側走行です。海外での運転に慣れていない方は、最初は戸惑うかもしれませんが、高速道路は車線も多く基本的には運転しやすいでしょう。
ピレネーでのドライブで知っておきたいこと
ピレネー山脈で快適なドライブをするために、知っておきたいポイントをいくつかご紹介します。
☆ 信号が少なくロータリー(環状交差点)が多い
ロータリー内は半時計回りで、ロータリー内を走行する車両が優先です。
☆ 高速道路(Autovia)は走行しやすい
道路名が「A-数字」で表記されているものは高速道路(Autovia)で、車線も多く、快適に走行しやすいです。国道(Nacional)や市町村道(Comarcal)は比較的車線が少なく、カーブも多くなります。特に峠越えは、車線幅が狭くカーブも多くなるので注意しましょう。
☆ 南北の移動がしやすい
ウエスカ県ではピレネー山脈の位置などもあり、峠を越える横移動(東西移動)よりも谷に沿って走る縦移動(南北移動)がしやすい傾向にあります。
☆ 日中の移動を心がけよう
ウエスカ県内では町中を除いて、国道沿いでも街灯のないエリアがほとんどです。慣れない山道での夜間の運転は危険なので、日の出や日没時間を予め確認して、なるべく日中に目的地に辿り着くようにしましょう。
☆ 冬でも安全に通行できる道路が多い
ピレネーの山間部にはスキー場が多いため、冬場でも比較的安全に通行できる道路が多いです。ただし、雪の山道に慣れていない方は、カーブの多い山間部での運転は難しいかもしれません。
☆ 旧市街地の乗り入れには注意
中世期に建てられた旧市街地の道は、幅が狭く複雑に入り組んでいるため、不慣れな観光客が車で乗り入れても苦労するだけです。町によっては、住民や配送業者以外の立ち入りを禁止しているエリアもあります。原則として旧市街地の外にある公共の駐車場を利用し、そこから徒歩で観光するようにしましょう。
☆ カーナビはGoogleマップで
レンタカーにカーナビがついていない場合でも、ウエスカ県内ではGoogleマップが問題なく使えます。
ウエスカ県のレンタカー事情
ウエスカ県でレンタカーをする場合、日本を出発する前に国際運転免許証(International Driving Permit)の取得が必須です。国際運転免許証の有効期間は1年で、使用する際は常にパスポートと日本の運転免許証を提示する必要があります。
ウエスカ県のレンタカー
スペイン語、フランス語、英語に対応しており、ウエスカ市、ハカ市、サラゴサ市での受け取りと返却が可能です。
ルートマップ
安全運転に気を付けて、ピレネー・ドライブを楽しんでください!
ウエスカ県の観光地図
ウエスカ県の観光地図をこちらのリンクからダウンロードすることができます。