
ソモンターノワインは、ウエスカ県のソモンターノ地方で生産されるワインです。
スペイン語で「山の麓」という意味を持ち、ブドウ畑はその名の通りピレネー山脈の麓に広がっています。
ブドウの栽培に適した気候に恵まれており、スペインで最も個性的なワイン生産地のひとつとして知られています。
ウエスカでは、おいしい食事にソモンターノワインは欠かせません。今回の記事では、ウエスカの誇るソモンターノワインを紹介します!
D.O. ソモンターノ 個性的なワイン生産地
フランスとの国境近く、ピレネー山脈の麓に広がるソモンターノは、知る人ぞ知るスペイン屈指のワインの名産地です。ピレネー山脈の麓、高原地域で大切に育てられたブドウから造るワインは、スペインで最も個性的なワインとも称えられており、近年、世界中のワイン通から注目を浴びています。
スペイン語で「山の麓」を意味するソモンターノ
ソモンターノはウエスカ県で人口が3番目に多い、バルバストロの町を中心にした地域です。
ソモンターノ(Somontano)とは、スペイン語で「山の麓」を意味します。
その名の通り、ソモンターノはピレネー山脈の麓からエブロ渓谷まで広がる高原地帯なのです。

標高の高さと寒暖差
ソモンターノ一帯は、夏は乾燥して暑く、冬はピレネー山脈から冷たい風が吹くことから気温が下がる地域です。世界のワイン向けのブドウ品種は標高300~500mの範囲で栽培されていることが多いですが、ソモンターノの標高は350ⅿ~1000ⅿと比較的高く、標高の高いワイン産地として有名なアルゼンチンに匹敵します。
標高の高い地域では日中の寒暖差が激しくなります。ブドウは日中暖かくなると糖分を多く作り出しますが、気温が高いとエネルギーの消費も大きくなります。寒暖差の激しい高地では夕方から夜にかけて気温が下がるとブドウのエネルギー消費が抑えられ、日中に作られた糖分を蓄積できるのです。寒暖差があることで、より糖分の高いブドウが栽培でき、高い糖分のブドウが美味しいワイン造りを支えています。
数字でみるソモンターノ
4,000 ヘクタール
ソモンターノにあるブドウ畑の面積は4,000ヘクタール以上。東京ドーム850個分の広さです!
ブドウの品種 15
ソモンターノで栽培されているワイン用ブドウ品種の数は、赤白あわせて15品種です。
ワイナリーの数 31
ソモンターノには、31軒のワイナリーがあります。
ワインラベルの数 268
ソモンターノのワイナリーで作られているワインラベルの数は268です。
ワインの年間生産本数 16,000,000
ソモンターノワインは年間1600万本生産されています。
※参照:ソモンターノ原産地呼称委員会 https://dosomontano.com/
ワイナリーマップ
D.O. ソモンターノは、北はソブラルベ地方とリバゴルサ地方、西はオジャ・デ・ウエスカ地方、南はモネグロス地方、東はリテラ地方に接した地域に広がっています。
D.O. ソモンターノにはピレネー山岳地帯、ソモンターノ丘陵地帯、平野地帯の3つのサブゾーンがあり、標高・土壌・気候条件などの違いから、各地域で特色のあるワインが生産されています。
ソモンターノワインの歴史
モンターノワインは、いつ頃から造られ始めたのでしょうか?
古代~中世
紀元前500年頃から、エブロ渓谷に移り住んだ人たちによってブドウの栽培が始まっていたと伝えられています。そして、紀元前2世紀頃には、ソモンターノに定住したローマ人によってブドウの栽培やワインの生産技術がもたらされ、広い範囲でワインが生産されるようになりました。しかし、ピレネー山脈やエブロ渓谷に遮られたこの一帯は、交通の便が悪く、この地で造られたワインは地元の人たちだけに楽しまれていました。
中世に入ると、ソモンターノ全域でブドウが栽培されるようになり、地域の修道院によるワイン生産が盛んになりました。
19世紀
19世紀に入ると、ブドウネアブラムシ(フィロキセラ)の疫病により、フランス全土のワイン畑が壊滅的な被害を受けました。19世紀後半にはフランスのボルドー出身のワイン生産者が、ソモンターノに10万ヘクタール近くブドウの苗を植え、ソモンターノワインの輸出と生産が増加しました。
現在
1960年代から70年代にかけて、ソモンターノ・デル・ソブラルベ地区協同組合が発足し、地域として高品質のブドウ栽培に取り組むようになりました。1984年にはソモンターノ原産地呼称という呼称が承認され、90年代に入るとは大規模なワイナリー企業が参入。近代的な醸造技術が導入され、品質の高い革新的なワインの産地としてソモンターノの名が広く知られるようになりました。

ブドウの品種
ソモンターノでは15種類のワイン用ブドウ品種が栽培されています。ソモンターノでは多品種が認可されており、地元産のブドウ品種(土着品種)にこだわらない自由な発想で、個性あふれる革新的なワインを作っています。
ガルナッチャといったスペインワインを代表する品種はもちろん、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネなどの国際品種も多く栽培されています。近年はソモンターノらしさを打ち出して、モリステルやバラレタなどの土着品種の需要も高まっています。 ここからは、赤ワイン用品種と白ワイン用品種に分けて、ソモンターノで作られている15の品種をご紹介します。

赤ワイン用品種
テンプラニージョ Tempranillo
スペインの代表的な赤ワイン用の黒ブドウ品種。濃厚なブラックベリーの風味が特徴で、繊細でフルーティーな味わいのワインが生まれる。
シラー Syrah
フランスコート・デュ・ローヌ地方原産で、ブラックペッパーと表現されるスパイシーな香りが特徴的。 独特の濃い色合いをしており、フルボディで口当たりが滑らかな、力強いワインを生み出す。
ピノ・ノワール Pinot Noir
ブルゴーニュ地方を代表するピノ・ノワールで、気候・土壌・病害虫の影響を受けやすく、栽培が難しい繊細な品種。 果皮が薄く、チェリーやラズベリーのようなフルーティさがあり繊細でエレガントな印象の赤ワインに仕上がる。世界で最も高価な赤ワインと言われるゴーニュの「ロマネ・コンティ」もピノ・ノワールから作られている。
パラレタ Parraleta
ソモンターノ地方原産の、成熟が遅く収穫量の少ない希少な黒ブドウ品種。濃い色、ほどよい酸味、豊富なタンニンを持つ芳香が特徴的で、伝統的で素朴な印象の赤ワインを造る。主にモリステルやテンプラニーリョとブレンドされている。
モリステル Moristel
ソモンターノ以外ではほとんど栽培されていない土着品種。ラズベリー、チェリー、ルバーブなどのフルーティーな香りが特徴的で、ほのかなタンニンと酸味のバランスが取れたライトボディの赤ワインの生産に使われている。
メルロー Merlot
フランスのボルドー地方原産の赤ワイン用品種で、粒が大きく、果肉が肉厚で果皮が薄い。プラム、ブルーベリー、チョコレートなどの果実やスパイスの香りがし、渋みと酸味のバランスが取れたまろやかな味わいが特徴。
ガルナッチャ・ティンタ Garnacha tinta
アラゴン州原産の黒ブドウ品種で、スペインで生産される赤ワイン用2大品種のひとつ。スペインだけでなく世界中で栽培されており、他の地域ではグルナッシュと呼ばれている。「赤ワイン品種の中で最も甘いぶどう」と表現されることもあるように糖度が大変高く、キャンディのような甘いアロマやフルーティーさが特徴。
カベルネ・ソーヴィニヨン Cabernet-Sauvignon
フランスのボルドー地方原産で、世界で最も多く栽培されている黒ブドウ品種のひとつ。深みのある色合いとしっかりとしたタンニンが特徴で、芳醇な果実味と力強さが印象的な 赤ワインらしい赤ワインを造る。
白ワイン用品種
ソーヴィニヨン・ブラン Sauvignon Blanc
フランス・ボルドー地方を原産とする白ワイン用ブドウ品種。 草原のような爽やかなアロマが特徴的で、フルーティーでさっぱりとした酸味がある、爽やかな辛口の白ワインを造る。
リースリング Riesling
ドイツのライン川流域を原産地とする白ワイン用ブドウ品種。豊かな酸味と、花や香水に例えられるような芳香が特徴的で、最も高貴な白ワイン用ブドウ品種とも呼ばれている。
マカベオ Macabeo
スペイン北東部原産でソモンターノの伝統的な土着品種のひとつ。比較的酸味が強く、花やハーブの香りを持つのが特徴で、辛口でフルーティーな白ワインを造る。
ガルナッチャ・ブランカ Garnacha blanca
黒ブドウ品種のガルナッチャが突然変異して生まれた白ワイン用ブドウ品種。高いアルコール度と低い酸度が特徴で、柑橘系やハーブの香りとコクのある果実味のある白ワインに仕上がる。
シャルドネ Chardonnay
フランスのブルゴーニュ地方マコネ地区が発祥の白ワイン用ブドウ品種で、世界中のさまざまなワイン産地で生産されている世界で最も人気の高い白ワイン用ブドウ品種。その土地のテロワールや作り手の考えが色濃く反映される品種で、ソモンターノのシャルドネは芳香が豊かでエレガントな仕上がりになる。
アルカニョン Alcañón
ソモンターノの土着品種のひとつで、生産量がごくわずかな希少な白ワイン用ブドウ品種。以前はマカベオと同じ品種と考えられていたが、遺伝子解析により異なる品種であることが判明した。非常に個性的な香りを持つ軽めの白ワインを造る。
ゲヴュルツトラミネール Gewürztraminer
ドイツ原産で、ゲヴュルツとはドイツ語で香辛料の意味。果皮が薄っすらピンク色をした白ワイン用ブドウ品種で、ライチのような華やかな香りと高貴な味わいが特徴。
日本でも買えるソモンターノ
日本ではソモンターノワインを見つけるのはなかなか難しいのが現状です。しかし、ソモンターノワインは高品質かつリーズナブルと定評が高く、他のスペイン産ワインとは違った味わいが楽しめるので、機会があったらぜひソモンターノワインを購入してみてください。
日本で購入可能なソモンターノワインを紹介します。
エナテ(Enate)
バルバストロ近くの小さな村エナテにあるワイナリーで、自社栽培のブドウのみを使用した高品質のワインを生産するワイナリー。テンプラニージョやカベルネ・ソーヴィニヨンを使った赤ワイン、シャルドネやゲヴュルツトラミネールを使った白ワインなど、幅広いワインを生産している。
ビニャス・デル・ベーロ(Viñas del Vero)
1986年に政府により創設されたビニャス・デル・ベーロは、DOソモンターノの売り上げの44%を占めるソモンターノ随一の生産者。1160ヘクタールのブドウ畑を管理しており、そのうち800ヘクタールは自社畑で、使用する80%以上のブドウは自社生産で、品質が確かなワインを生産している。
「スペインのニューワールド」と呼ばれるソモンターノのワインを試してみて!
ワイン原産地として認可されたのは1984年と比較的最近のことで、「スペインの中のニューワールド」とも呼ばれるソモンターノ。ピレネー山麓のブドウ栽培に適した気候と土壌に恵まれたこの地域では、土着品種のみならず国際品種を多く取り入れており、多彩で個性的なワインを生産しています。現在ではスペインワインの隠れた名産地として高く評価されているソモンターノのワインを、ぜひ試してみてください。

ウエスカ県の観光地図
ウエスカ県の観光地図をこちらのリンクからダウンロードすることができます。