ピレネーの美しい村 アルケサルのサンタ・マリア教会

プレピレネーの麓のアルケサルの岩崖の上に鎮座するサンタ・マリア教会Colegiata de Santa María la Mayor de Alquézar)は、アラゴン州の重要文化財に指定されている歴史ある教会です。

かつては、村の名前の由来ともなったイスラムの砦があった場所に建てられたロマネスク様式の教会は、ロマネスク様式の回廊柱頭彫刻ゴシック様式の壁画ルネサンス様式彫刻がほどこされた祭壇装飾など、見どころが豊富です。

アルケサル観光のハイライトとも言えるサンタ・マリア教会について、ご紹介します!

イスラムの香り漂うアルケサルの村

プレピレネー山脈の麓、ベーロ峡谷に囲まれた切り立った崖の上に、アルケサルの村があります。

アルケサルという名前はイスラム語で「城」を意味する「Al-Qasr」という言葉に由来しており、もともとはイスラムの砦として建設された村でした。

迷路のような小道沿いにレンガや瓦を多用した3階建ての伝統家屋が並ぶアルケサルの村は、かつてはイスラムの村であった名残があり、どこかエキゾチックな雰囲気があります。

人口わずか300人程の小さな村ですが、イスラム教文化とキリスト教文化が融合した中世の美しい町並みが残されており、「スペインで最も美しい村」に登録されています。

サンタ・マリア教会について

アルケサルの村の岩崖の頂上に建つサンタ・マリア教会の正式名称は、「Colegiata de Santa María la Mayor de Alquézar」(サンタ・マリア・ラ・マヨール教会)。11世紀に建てられたこの教会は増改築を繰り返し、城塞、修道院、防御塔からなる複合施設です。

9世紀にイスラムの要塞として建設

サンタ・マリア教会の起源は、9世紀初頭まで遡ります。

8世紀頃からイスラム教徒がアラゴン地方に進出し、もともと住んでいたキリスト教徒とピレネー山脈を防衛線にして衝突を繰り返していました。9世紀初頭にウエスカを征服したイスラム系の反乱軍の副指揮官であったジャラフ・イブン・アラドは、ソブラルベ地方のキリスト教徒に対抗する防御要塞として、アルケサルの丘の上に城塞を築きました。

11世紀にキリスト教徒が奪回

1067年頃に、ラミロ1世の息子であるサンチョ・ラミレスによってアルケサルが奪回されました。アルケサルの砦はキリスト教徒の要塞となり、キリスト教徒とイスラム教徒が争ったレコンキスタ(国土回復運動)後期には、軍事的に重要な役割を果たしました。キリスト教徒の支配が定着すると、アルケサルの軍事的な要塞としての重要性は失われ、要塞だった場所にはロマネスク様式の教会が建設されました。現在のサンタ・マリア教会は11世紀から16世紀に建設・改修されたものです。

サンタ・マリア教会の見どころ

アラゴン州の重要文化財にも指定されているサンタ・マリア教会は、ロマネスク様式の回廊や柱頭彫刻ゴシック様式の壁画ルネサンス様式の祭壇彫刻ロマネスク様式のキリスト磔刑像など、見どころが豊富。サンタ・マリア教会で必ずチェックしておきたい、見どころをご紹介します。

回廊のロマスク柱頭彫刻

台形の回廊を囲むように12世紀に建設されたロマネスク様式の回廊では、二重柱が規則的に並び半円形のアーチを支えています。回廊の入り口部分には、12世紀前半に作られたロマネスク様式の柱頭が6つ残っており、精巧な彫刻が施されています。彫刻のモチーフは旧約聖書の場面で、イサクの犠牲、アダムの創造、アダムとイブの原罪、カインとアベル、大洪水とノアの箱舟などが描かれています。

回廊の壁画

回廊の壁画は15世紀描かれ、16~19世紀に描き直されたもので、新約聖書の場面を描いています。完全に塗装された状態で保存されている、アラゴンで唯一の回廊壁画です

教会の祭壇装飾

教会の主祭壇画はルネサンスやバロック様式が混在した16世紀のもので、金箔や多色で飾られた精巧な木造細工が圧巻です。中央は聖母マリアの被昇天の像で、祭壇画の残りの部分には聖母マリアとイエスの生涯のさまざまな場面が語られています。ベンチ部分には、キリストの受難の日の場面が描かれています。礼拝堂の天井は自然光を取り込むために開けられた穴「オクロ」を中心に、幾何学的な彫刻が施されています。ラテン語で「目」を意味する「オクロ」はローマのパンテオンにも見られる構造で、ローマ時代から建造物に使われていました。

教会のキリスト像

礼拝堂にある磔刑にされたキリスト像は、13世紀につくられたもの。両足の配置や4本の釘など、ロマネスク様式の磔像の典型的な特徴を捉えています。キリストの穏やかな表情にも注目してみてください。

回廊2階からの眺望

サンタ・マリア教会はアルケサルの村の最も高い場所にあり、回廊の2階からは村とその周辺を一望できます。イスラム教とキリスト教の文化が融合したアルケサル村の風景には、中世の名残が感じられます。オリーブの段々畑やアーモンドの木の向こう側には、ベーロ川が流れる峡谷の岩壁も見渡せます。古城から眺めるアルケサルの原風景を、存分に楽しんでください。

サンタ・マリア教会のチケット情報

ツアー名:Visita Guida Ciolegiata(ガイド付きツアー)

ツアースケジュール:毎日 11:00~14:00、16:00~18:00、30分間隔(順番に訪問)

入場料:大人€4.00、12歳未満の小人無料(チケット購入は必須)、65歳以上とユースカード保持者 €2.50

チケットの購入:入口で直接購入が可能ですが、オンラインでのチケット予約を推奨

チケットの購入はこちらから https://turismoalquezar.es/entradas/

注意事項

  • 事前にチケットをご予約ください。
  • 5~10分の上り坂があるため、歩きやすい靴でお越しください。
  • 展示物や家具には手を触れないでください。

村の歴史が刻まれたサンタ・マリア教会

アラゴン州の重要文化財にも指定されているサンタ・マリア教会には、中世から現在までの村の歴史そのものが刻まれています。イスラム教徒とキリスト教徒が争っていた時代には難攻不落と呼ばれたかつての要塞からは、アルケサルの村とその周辺の絶景も眺められます。アルケサルを訪れた際には、山と峡谷の美しい自然に囲まれたサンタ・マリア教会へ足を運んでみてください。

ウエスカ県の観光地図

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