
ウエスカ県の北東部、リバゴルサ地方にあるロダ・デ・イサベナは、人口わずか40人ほどの小さな小さな村です。中世の面影を残す石畳や石造りの建物が並ぶロダ・デ・イサベナの中心に、ひときわ目立つロマネスク様式の大聖堂が建っています。
今回は小さな村の大聖堂、ロダ・デ・イサベナ大聖堂について、ご紹介します!
スペインで最も美しい村 ロダ・デ・イサベナ
ロダ・デ・イサベナは、ウエスカ県の北東部のリバゴルサ地方にある小さな村です。
イサベナ川の西側の、3つの山脈に囲まれた標高907mの丘の上に位置しています。
ロダ・デ・イサベナの歴史
イサベナ渓谷には古代ローマ時代から定住が始まりました。956年にロダ・デ・イサベナ司教区が設立され、最初の神殿が建設されました。10世紀にはイスラム教徒に対する要塞化された村として、リバゴルサ地方の軍事の要として機能していました。イスラム教徒に侵略された後、再びキリスト教徒が再征服しました。
10世紀から12世紀には、この地方の宗教と経済の要として栄華を極めたロダ・デ・イサベナですが、12世紀に司教座が移転すると次第に衰退し、時代に取り残された村となりました。村の過疎化が進み、現在では大聖堂のあるスペイン最小の村として知られています。
ロダ・デ・イサベナ大聖堂について
ロダ・デ・イサベナ大聖堂の正式名称は「Catedral de San Vicente de Roda de Isábena」(サン・ビセンテ・デ・ロダ・デ・イサベナ大聖堂)で、スペインの歴史遺産に指定されている大聖堂です。教会と回廊という2つの異なるスペースで構成されており、ピレネー地域を代表するロマネスク建築のひとつです。

9世紀に創建
ロダ・デ・イサベナ大聖堂の歴史は、9世紀末にリバゴルサ伯爵ラモン1世によってロダ司教区が設立されたことから始まります。956年にリバゴルサ伯爵の援助で大聖堂が建設され、司教オディセンドによって聖別されました。しかし、1006年にイスラム教徒アブド アル・マリクの軍隊がリバゴルサ軍を襲撃し、教会や城が破壊されました。
11世紀に教会の再建
最初の大聖堂が破壊された後、リバゴルサの人々は1007年に新しい大聖堂を建設することを決定しました。その際、ロンバルディアのロマネスク様式が用いられたのです。
ナバラ王サンチ3世によって大聖堂の建設が始まり、1030年にアルヌルフォ司教によって新たに聖別されました。アラゴン王サンチョ・ラミレスの治世に、後陣と隣接する身廊の一部の建設が完了し、南側の塔も完成しました。
司教区の移転~修道院へ
12世紀前半には3 つの身廊が高くされ、後陣に地下礼拝堂が建てられました。1149年、ロダ・デ・イサベナの司教区はレリダに移転し、193年間続いたロダ・デ・イサベナ司教座は終わりを迎えます。 司教座が移転した後の大聖堂は、修道院となりました。
18世紀に大改修
司教座の移転後、衰退の一途をたどっていたロダ・デ・イサベナ大聖堂ですが、18世紀には大改修工事が行われています。現在も残る南柱廊玄関と塔は、18世紀の大改修で建設されたものです。
ロダ・デ・イサベナ大聖堂の見どころ
11世紀に建設されたピレネーを代表するロマネスク様式の大聖堂であり、スペインの歴史遺産にもなっているロダ・デ・イサベナ大聖堂の見どころをご紹介します。
クリプタ(地下礼拝堂)
大聖堂の内部は祭壇が地上よりも高い場所にあり、地下礼拝堂がむき出しになっている珍しい構造をしています。3つの地下礼拝堂は1125年頃に聖別されたもので、中央にある地下礼拝堂は身廊の床と同じ高さに位置しています。3つの半円アーチを隔てて身廊に通じています。

地下礼拝堂の聖ラモンの石棺(ロマネスク)
地下礼拝堂で見つかった石棺は12 世紀に作られたもので、聖ラモンの遺体が安置されています。石棺には聖母マリアの生涯、キリストの幼少期のシーン、聖ラモン自身が教皇である場面が、精巧なロマネスク彫刻が刻まれています。




壁画
北側の身廊には「聖具室」として知られる地下室があります。聖バレリウス(サン・バレロ)の遺骨が納められた箱が展示されています。地下室の壁には、13世紀の壁画が残されています。福音書記者のモチーフに囲まれたキリストや、キリストの洗礼の図、天秤を持った聖ミカエルの図など、保存状態が大変よく色も鮮やかに残っています。

聖ラモンの椅子
ツゲの木で作られた聖ラモンの椅子は、動物をモチーフとした精巧な彫刻が施されているのが特徴。北欧美術の影響を受けたもので、スペインでは他に類を見ない芸術的な作品です。

回廊
ロダ・デ・イサベナ大聖堂の回廊は12世紀半ばに建設されたもので、平面は四角形で半円形のアーチが続いています。柱の頭部は幾何学模様や植物のモチーフで装飾されており、2つの柱頭には動物の形が彫られています。また、柱に支えられたアーチの内側には12世紀から15世紀にかけての埋葬碑文が刻まれています。

回廊のレストラン
大聖堂の回廊に面した部屋は、19世紀頃までは20人前後いた修道士たちの食堂として使われていました。18世紀のゴシック様式のフレスコ画や修道院の家具が保存されていますが、現在は、アラゴン料理を提供するレストランになっています。
メニューには、テルナスコやグラウスのソーセージなどの典型的なアラゴン料理が含まれています。レストランの看板メニューでもある肉のグリルで使われている牛肉は、レストランが経営している家族所有の牧場で飼育されたもの。地元産のソモンターノワインなども豊富に取り揃えているので、大聖堂を見学した後は、かつての修道士たちが食事をした空間で、絶品のアラゴン料理とワインを楽しんでください。




ロダ・デ・イサベナ大聖堂のチケット情報
ツアー名:Catedral de Roda de Isábena
ツアースケジュール:
7月~8月
月曜日:11:15、12:30、13:30
水~日曜日:11:15、12:30、13:30、16:30、17:30、18:30
定休日:月曜日の午後と火曜日
10月~5月
月曜日:11:15、12:30、13:30
水~日曜日:11:15、12:30、13:30、16:30、17:30
定休日:月曜日の午後と火曜日
所要時間:約1時間
入場料:大人€4.00、12歳未満の小人無料(チケット購入は必須)
チケットの購入:入口で直接購入が可能ですが、オンラインでのチケット予約を推奨
チケットの購入はこちらから https://museodiocesano.es/catedral-roda-isabena/
ロマネスクの至宝が眠る小さな村の大聖堂へ
現在は「スペインで大聖堂のある最も小さな村」となってしまったロダ・デ・イサベナは、中世の時代からまるで時が止まったような雰囲気があります。観光客も多くなく、中世の修道士や村の人々に想いを馳せながら静かに観光を楽しめます。回廊のレストランではアラゴン料理も楽しめるので、リバゴルサ地方へ足を運ぶ時はぜひ立ち寄ってみてください。

ウエスカ県の観光地図
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